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11.犬具の選択/首輪

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犬に優しい道具選び 〜嫌具と賢具〜
犬に使用する道具全般を犬具と言います。その犬具の中でも犬に装着使用するものとして重要となるカテゴリーがカラー、ハーネス、リードです。また、それぞれのアイテムにおいて使用目的(設計)が異なり、一般的な作りの犬具が大部分を占める中、「しつけ」と称して犬の行動矯正を目的とした犬具も幅を利かせております。その一方で、犬の身体に配慮した犬具も少しずつ認知度が上がってきています。そこで、各カテゴリーの主要アイテムの特徴を参考までに説明致します。

 
■カラー(首輪)
 @一般的なカラー(革製、ナイロン製、布製など)
 Aハーフチョークカラー
 Bチョークカラー(別称:チョークチェーン)
 Cスリップカラー(紐製のチョークカラー)
 Dスパイクカラー(別称:ピンチカラー、プロングカラー)
 Eヘッドカラー(例:ハルティ、ジェントルリーダーなど)

 
 
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左:チョークカラー  右:スパイクカラー
 
A〜Eは一般にしつけを称する歩行矯正に使われる犬具です。ハーフチョークに関しては緩めのチョーカーとして迷子札の装着用としている方もいますが、ここでは本来の歩行矯正犬具として話を致します。さて、歩行矯正犬具の目的は犬のリード引っ張りを防止することにあります。では、その原理とは?


bombチョークカラーの場合

 「犬が引っ張る」
   ↓
 「リードを瞬間的に引いて首にショックを与えたり絞める」
   ↓
 「犬は心身に嫌悪刺激を感じることで引っ張り行動を止める」
   ↓
 「嫌悪刺激が心身に刷り込まれれば、その後は僅かなリードの引き(信号)で止まる」

これがチョークカラーにおける一般原理です。ハーフチョークの場合は首が完全に絞まり切らない構造なので犬に優しいと言う者もいますが、リードを引いて嫌悪刺激を与える理屈は同じなので決して優しくはありません。そしてスパイクカラーの場合、犬が引っ張ることで内側に突き出したピンが皮膚を挟みます(または食い込む)。犬はその嫌悪刺激を避けるべく引っ張りを自制するという理屈です。これはチョークカラーの刺激が通用しない犬に対して、より強い嫌悪刺激を与える目的で使われたりします。

また、これらの犬具を容認する方々は「使いこなせば信号レベルの刺激(軽いリードの引き)で犬は従う」と言うのですが、信号レベルの刺激であれば普通の首輪やハーネスでも十分に伝達出来るはずです。ところがチョークカラーやスパイクカラーを外して一般的な首輪に戻しても犬は引っ張りを止めることはありません。つまり、チョークカラーやスパイクカラーの抑止力がとても強いことを意味します。しかし、その本質は如何に?

装着さえしていれば身体に嫌悪刺激を与えずとも犬が引っ張らないということは、一見すると犬に優しい状態にあると思われがちですが、それは間違いであると断言できます。それらの犬具に慣らされた犬が何故引っ張らないのか? それは嫌悪刺激に対する「恐怖・不快感」を犬が常に意識しているからです。身体に直接罰は加えずとも、装着すること自体が犬の精神に対する嫌悪になっているのです。これは犬の心を常に侵している状態であり、お世辞にも「使い方を極めれば犬に優しい」などと言えるものではないでしょう。

また「犬の首は頑丈だから大丈夫!」と言う者もいますが、首で比較的丈夫なのは後ろ側の皮膚の厚い部分ぐらいです。犬の首周りの基本構造(喉頭、気管、食道、頸椎など)は人間と同様であることは医学的にも解明されています。また、動物は痛みに対する強さを持ち合わせているので、一見すると頑丈そうに思われがちですがそうではありません。これは体の一部を損傷をしても痛みに苦しむことなく生き延びることが出来るように自然界が動物に与えた能力の1つなのです。その能力を都合よく使っているのが動物実験の数々だったりする訳ですが、その能力に付けこんで犬の首に嫌悪刺激を与えるべきでもないと思います。

と、ここでお気付きになった方もいるかと思います。犬は肉体的な嫌悪には慣れてしまうことがあります。つまり、チョークカラーもスパイクカラーも次第に通用しなくなるケースが多いのは、犬の痛覚が意図せず断ち切られていることも考えられます。


bombチョークカラー使用の危険 装着例その1
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一般飼い主に見られる装着位置
(首輪と同じ位置に装着)


一般飼い主の多くが装着する場合、首輪と同様の位置に装着されることが多いです。この位置でリードショックを加えることで、気官および頸椎への損傷リスクが高まります。それはチョークカラーに限ったことではなく、首の絞まらないハーフチョーク一般首輪も例外ではありません。特に前傾で引っ張る犬に対してリードショックを加えると、犬の荷重と併せて首の前部に衝撃が集中します。

 
bombチョークカラー使用の危険 装着例その2
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「正しい」とされる装着位置
(訓練ベースの装着位置)

 
チョークチェーンを容認される方々の中には「正しく装着すれば害はない。」と言われる方もいます。正しい装着位置とは、あごの付け根から耳の付け根にラインを結ぶ位置になる訳ですが、この部位は敏感なので衝撃を加えずとも僅かな力で犬に信号が伝わるという理屈です。そのように聞くと思わず納得しそうになりますが、何故この部位が敏感かを考えてみましょう。あごの付け根付近は気道の入り口であり、声帯などもある咽喉です。耳の付け根付近は内耳があり、鼓膜や半規管などが集中しています。また、脳も近いです。つまり言い換えれば「デリケートな部位だから、僅かな刺激で効果が得られる。」という訳です。

チョークチェーンで行動矯正をするにあたって、その学習プロセスの全てが僅かな信号レベルで犬を制御できるならばまだしも、その学習プロセスにおいては少なからず1〜2回の強いリードショックを加えることは余儀なくされます。しかし、その1〜2回または継続使用において咽喉や内耳の損傷リスクもあり、脳や眼圧にも影響を与えるとの話もあります。

また「チョークカラーの正しい装着位置」というものは訓練における脚足歩行をベースとした装着位置であり、犬に匂い嗅ぎも排泄もさせないような散歩を推奨するやり方です。この方法は犬が生き物として得るべき主要な行動ニーズを満たすものではなく、犬の精神衛生およびQOL維持向上には適していないと言えます。

 
bombヘッドカラーの場合

「犬が引っ張る」
  ↓
「リードがピンと張ってマズルに通したベルトが締り、自動的に頭部が真横に向く」
  ↓
「マズルと頭部を強制的に管理されることで、物理的に前方を向けなくなる」
  ↓
「嫌悪刺激が心身に刷り込まれれば、その後は僅かなリードの引き(信号)で止まる」

この犬具は犬の首を絞めることがないので優しいと言われていますが、犬の意思に反して頭部を強制的に横向きにするので、決して首に優しいとは言えないでしょう。もしも、自分の首をいきなりチェーンで絞められたり、強引に頭部を横向きにされたらどうでしょう。きっと嫌悪刺激を避けるべく行動を控えるのではないでしょうか。(もちろん嫌悪刺激に怯えながら)。

さて、これらの犬具(嫌具)で本当に犬が心から散歩を楽しめるのでしょうか。嫌具を外したとき、犬が引っ張りを再開するのは何故か? または嫌悪刺激に耐えながらも引っ張るのは何故か? それは理不尽な呪縛からの解放であり、本来得られるべき行動ニーズを満たしたいと思っているに過ぎない訳で、決して飼い主を支配しようというものではないのです。

それでは犬に引っ張り行動の抑制学習をさせるプロセスとして賢い犬具とは何か? カラーに関しては一般的な首輪を選択して迷子札を装着するなり、ごく普通の散歩や誘導の際に使うのが賢明であり、犬との快適な散歩を行う上で何より重要なポイントは矯正犬具の選択ではありません。 


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ハルティ



flair一般的な首輪の選択および装着のポイント

@皮製およびナイロン製が一般的。
A首の接触面がフリース素材やクッション素材で犬に優しいモノもある。
B首に食い込むような幅の細い形状は避ける。
C首輪をきつく締めすぎないこと。
D小型〜中型犬の装着時には、指2本分が入る余裕を持たせる。
E大型犬の装着時は指3〜4本分が入る余裕を持たせる。
F幼犬は日増しに成長するので、日々首周りのサイズが適切かを確認する。
G柴犬やウイペットのように頭部の小さい犬種は首輪抜けのリスクが高い。
H首輪抜け対策としても、基本的に散歩はハーネス選択が良い。

 
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左:革製  右:ナイロン製


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フリースライン・カラー(柔らかで優しいフリース素材)


生活上、首輪にも慣らしておくことは必要だと思います。しかし犬の散歩を行う上で、不適切な犬具の選択により犬の心身を痛める危険が大いにあるということをご承知頂きたい。しつけと称して大事な愛犬の心身に自らの手で傷付けることに何の意味があるでしょう。「例外的な使用ならば致し方ない」との声もありますが、嫌悪刺激を必要とする例外的な犬とはどのような犬でしょう。世の中に例外的な犬がいるとするならば、それは規格外を意味します。規格外の犬に関しては、型にハマった嫌悪刺激は通用しないと思います。もしも犬と心を通わせながら快適な散歩を行うのであれば「犬に優しいハーネスの選択」および「犬に優しいリードの選択」が望ましいでしょう。
 
 
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