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6.犬のリーダー論とは

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リーダー論の不思議 〜偽りの定説〜

犬のトレーニング業界では、犬は群れを成し、リーダーを筆頭に順位を付ける生き物であるという誤った定説があります。

俗に「犬のリーダー論(アルファシンドローム、権勢症候群)」と呼ばれるものです。

私自身は犬の群れ(グループ)を幾つも構成して飼育した経験からすると、いわゆる順位付けの犬社会を一度も見たことがありません

むしろリーダー論を唱える専門家に聞いてみたいのは、犬の群れ(グループ)をどれだけその目で観察したのかということ。

リーダー論の話を聞いていると、その多くはトレーナー自身の観察検証によるものではなく、机上の話にしか思えません。

もしもトイ・プードル10頭、ビーグル10頭、柴犬10頭などのグループを形成した際、どの個体がリーダーで、個体間でどのような序列を成すのかを目の前で説明出来るのでしょうか?(疑問)

そして犬が飼い主の上に立つことを懸念したりするけれど、犬に対して強迫観念を抱き過ぎだと思います。

また、犬の散歩において、これまで何頭もの犬たちを先行して歩かせてきましたが、犬に支配されるような関係になったことなど1度もありません。

リーダー論・・・ 家族となりうる犬を相手に何をそこまで恐れているのでしょう。

 
 
 
リーダー論の不思議 〜群れの意義と序列の正体〜

ご存じでない方の為に話を掘り下げると、犬の先祖は狼であり、その狼がアルファ狼(リーダー狼)を筆頭に縦社会の群れを成すことから、犬もそういう社会構造であると思い込んでいるのが昔からの犬トレーニング業界です。

その説の元になる狼ですら、縦社会ではなく家族社会であることが観察研究によって常識化されてる現代において、犬には支配性があり序列を構築するという考え方はあまりにも大それたものと言えます。

さて、狼と犬の話をするにあたって、「群れ」「リーダー」「序列」などの言葉を用いる場合は、その定義は大きく異なるものになります。

両者を語る上で決定的な違いは、生存するにあたり、生き物として人類から完全独立しているか人類に完全依存しているかの違いがあると思います。

狼は餌の調達から住処の決定、そして繁殖に至るまでを種だけで独立して行います。

これは狼に限らず野生動物であれば同様ですね。

一方の犬は、餌、住居、繁殖の全てを人間に依存しています。

例え野良犬であったとしても、餌は人間が出すゴミやおこぼれに依存しているのがほとんどではないでしょうか。

狼が群れを成す中でリーダーが存在する理由を簡単に言うと、狩猟の統率や、強い遺伝子の子孫を残す為に自然と出来上がった社会的メカニズムであると思います。

しかし犬の場合、群れを統率して狩猟を行う必要もなければ、繁殖までも人間に管理されている状況であり、どんなに野性味が濃いとされる犬種であっても、人間の暮らしに寄り沿う生き物です。

その為、犬は群れの中で強力なリーダーシップを発揮する必要もないと考えられます。

もしも犬に縦の序列なるものがあるとすれば、それは人間が自分の色眼鏡で見ることによって生じる思い込みに過ぎないと思います。

例えば、ある群れの中で力を誇示している犬がいたとします。

でも、その個体のやっていることは単なる自己顕示であったり、単なる我ままだったり、単なる若気の至りであったりと、決してリーダーを目指そうとか、群れ内での順位を明確にしようというものには見えないのがほとんどです。

また、2〜3頭の群れ(グループ)であれば、頭数が少ない結果として序列が出来上がっている構図はありますが、それも犬の群れ一律に見られるものではありません。

また、「優位性を示す犬=リーダーを目指す犬」とも異なります。

性別・年齢・相性などの問題から、個体間で優劣を争う場合もありますが、これもリーダーを目指す行動とも言えないし、群れ内での順位を争うものとは意味が異なると思います。

何よりも、人間視点で一個体がどんなに自己顕示をして一番強そうに見えても、他犬がリーダーとして認めていなければ「群れの序列」とは言えないのです。

もちろん犬の中にもアルファ気質の個体はいますが、それは群れを統率牽引するというより、群れを統治する平和的リーダーとの見方 がしっくりくるのではないでしょうか。

そして群れの定義についてですが、群れと言っても、羊、牛、サル、ゴリラ、トド、ペンギン、ライオン、ハイエナ、ワニなど、その形態は「核家族の群れ」「一族の群れ」「グループ別の群れ」「巨大なコロニー」など様々です。

犬の群れに関して定義するならば、そこは序列のないコミュニティであり、性別・年齢不特定のクラス、サークルなどのようなものであるとの見方を個人的にはしています。

そして個体間において性別・年齢・性格他の要素を元に関係を構築する社会であるように見えます。

更に少し視点を変えると、町犬は巨大なコロニーを形成する群れとも言えるのではないでしょうか。

他犬に会えば目を逸らしたり、対立しあうオス同士でも
直接対決で傷付け合うのを避けるべくマーキング合戦を行います。これもまた犬の優れた社会性であり、巷の支配的なリーダー論では現実と程遠い犬の姿がそこにはあるのです。

以上はあくまでも「犬=人間に飼い慣らされている生き物」という定義による私の主観ですが、当たらずとも遠からずだと自負しております。

もしも、犬の順位付けによる社会構築(組織化)を観たという方がいらっしゃいましたら、その状況(組織の構成、個体の明確な役割・位置付け)をお聞かせ頂ければ有難いです。


 
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